夢回帰線II

さだまさし( 佐田雅志 ) 夢回帰線II歌詞
1.ナイルにて-夢の碑文-

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

読みかけのアガサ・クリスティ 膝の上に伏せて
遥かナイルの流れに 目を癒やせば
ゆるやかに 大空 紅く染めながら
おだやかに 夕陽 沈みゆく 地平線(ホライゾン)

スフィンクスの謎ならば 答は知っている
クレオパトラの愛した人の名前も
なのに私は今 心の迷路に
迷いながら黄昏てゆく 窓を見てる

あなたとの距離 五千数百年
愛する分だけ 遠い気がしている
永遠(とわ)の生命 求めて生まれた
はるかなる時の都で

私はあなたとの ほんの一瞬が 恋しい

カルカディと名付けられた ハイビスカスジュース
ふとマドラーでパピルスに文字を書けば
若紫色に あなたの名前が
拡がりながら にじみゆく 地平線(ホライゾン)

聖刻文字(ヒエログリフ)で刻めば あなたの名前が
いつか遠い時の流れを超えて
永遠(とこしえ)の生命を 手に入れるかしら
小さく私のイニシャルを添えて

あなたとの距離 五千数百年
地図なら葦の葉の 長さも無いのに
地平はるかに 赤い星煌いて
ナイルは銀河に 注ぎ始める

あなたとの距離 五千数百年
愛する分だけ 遠い気がしている
永遠(とわ)の生命 求めて生まれた
はるかなる時の都で

私はあなたとの ほんの一瞬が 恋しい


2.カリビアン・ブルー

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

海をふたつ越えた あなたからの手紙
とりとめなく 記された毎日のこと
文字に隠された せつなく蒼い炎
淋しいとも 会いたいとも書けずに
あの人に強く抱かれたまま
悲しい瞳に 僕を写している
CARIBBEAN BLUE 注ぐ光と裏腹に
CARIBBEAN BLUE かげりゆくあなたの心
底冷えのしあわせに とまどいながら
あなたは今 CARIBBEAN BLUE

愛をふたつ越えた あなたの部屋の窓に
風は熱く 火照りながらカーテン揺らし
ときめきの記憶 素肌にまといながら
おそらく今 あなたは海を見ている
数えても数え尽くせないと
わかってるくせに 波を数えている
CARIBBEAN BLUE 美しすぎる風景は
CARIBBEAN BLUE 美しすぎる程悲しい
コバルトの海を無理に紅く染めながら
夕陽が沈む はるかな礁湖(ラグーン)
CARIBBEAN BLUE 海賊になれない僕を
CARIBBEAN BLUE あなたは見透かすように
飛べない僕を空から見下ろすように
あなたは今 CARIBBEAN BLUE


3.SNOWMAN

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

白い空の子供達が この町を埋めてゆく
曇ったガラスに ふと浮かぶ僕の名前
あれは去年の冬前に めぐり会い 愛しそして
春を待てずに 去ったその人の指文字

SNOWMAN あの日二人
指先 凍えながら
SNOWMAN 生命を
心を託した はずだった

人は何故昨日のことを 忘れないでいるのだろう
悲しい夢なら 憶えなければいいのに
明日は晴れのち曇り ラジオから聴こえる歌
あれはあなたの 好きだった人の歌声

SNOWMAN 明日になれば
SNOWMAN とけてしまう
SNOWMAN Mh
涙のあとも見せたくないから

あれは去年の冬の



4.白鯨

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

俺の中で 誰かが 叫んでいる
どんなことが 起こったって 忘れるなと 呼んでる
お前との愛の為に 何を捨ててもいいはずなのに
目を醒まして 此処へ来いと 誰かが叫ぶ

あゝ おそらく 誰でも
胸の中に大きな海が 広がってる
そしてその海には 荒波をけたてながら

夢の化身にも似た 巨大な魚が棲み
男たちを誘う 此処へ来いと誘う
もう 待ち切れない

俺の中で そいつが 叫んでいる
負けるものと 思ったって かかって来いと 叫ぶ
お前ならわかってくれる きっとわかってくれている
俺がいつか 小さな舟 漕ぎ出すことを

あゝ おそらく そうして
俺は波に 呑まれてしまうとわかってる
仲間などいらない 独りきりで向ってゆく

夢の化身にも似た 巨大な魚がいて
男たちを誘う 此処へ来いと誘う
もう 待ち切れない

あゝ おそらく 誰でも
胸の中の 大きな 海と 闘ってる
荒波をけたてている 巨大な背中を見ている

夢の化身にも似た 巨大な魚がいて
男たちを誘う 此処へ来いと誘う


5.リンドバーグの墓 ~Charles A.Lindbergh Grave~

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

路傍のマリアは何も語らず 七つの聖なる池は水をたたえて
迷い迷いながら訪ね来た教会
あなたが憧れてた リンドバーグに会いたくて
大人には視えないものが視えた あなた
背中の翼で 今どこの空を 飛んでいますか

教会のオルガンの上を借りて
二人にあてた手紙を書き終えて
蒼い蒼い空へ ふたつの紙飛行機
高く高く高く 飛んでパリまでとどけ
遠くで雨が降っている 虹が見える
今でもあなたと 一緒にいます

ブーゲンビリアをオレンヂ色の風が
私のとなりをあなたの風が


6.ビクトリア・ピーク

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

愛がこんなに 切ないものだと
気づきもしなかった 香港harbor light
別れた人を 思い出すには
悲しいくらいがいい 香港harbor light

いつも独りだった あの時あなたと
二人でたずねたビクトリア・ピーク
夜霧にうるんだ夜景をみつめて私の肩を抱いたね
いつも独りだった 二人それぞれに
別の風景をみていた
九竜(カオルン)の夜は寂し気にはしゃいで
最終フェリーはため息ばかり載せて

愛がこんなに 切ないものだと
気づきもしなかった 香港harbor light
別れた人を 思い出すには
悲しいくらいがいい 香港harbor light

いつも独りだった 港に浮かんだ
レストランのあなたの眼差し
私を見ていて私を見てない 何処かで花火の音
いつも独りだった 二人それぞれに
背中合わせに愛してた
カクテルの色が 壁の明かりに透けて
別れの予感を飲み干したあの夜

愛がこんなに 切ないものだと
気づきもしなかった 香港harbor light
別れた人を 思い出すには
悲しいくらいがいい 香港harbor light

愛がこんなに 切ないものだと
気づきもしなかった 香港harbor light
別れた人を 思い出すには
悲しいくらいがいい 香港harbor light


7.Song for a friend

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

たとえこの恋が 終わっても
信じあえる 友達でいよう
命懸けで愛した人を
憎むなんて出来るはずがない

僕の河の水がいつか 濁ったからあなたの
魚達が消えたのか
あなたの澄んだ瞳が 曇ったから僕の
姿を見失ったのか
Song for a friend
恋の終わりには 誰もが出会う一場面
Song for a friend
傷つかないで 君ばかりのせいじゃない
生きていればすべてが 移り変わってゆくよ
たとえこの恋が 終わっても
信じあえる 友達でいよう
命懸けで愛した人を
憎むなんて出来るはずがない

砂時計の最后の粒が あなたの言葉に落ちて
僕等の時は停まったけれど
誕生日には花を贈り クリスマスにはカードを交わし
悩みごとも話せるような
Song for a friend
これから本当の 友達になれるといいね
Song for a friend
そしていつの日か それぞれの愛に出逢い
しあわせになれたならば 最高の物語
たとえこの恋が 終わっても
信じあえる 友達でいよう
命懸けで愛した人を
憎むなんて出来るはずがない

たとえこの恋が 終わっても
信じあえる 友達でいよう
命懸けで愛した人を
憎むなんて出来るはずがない


8.水底の町

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

八幡様の境内の 楠にはリスが住んでいた
石段下の泉には 蛍が飛んでた夏の日
裏山へゆけばクワガタや カブトムシやアゲハチョウがいて
夕立のあと夏草の 匂いが死ぬ程 好きだった
遠くでお寺の鐘が鳴って どこかの焚火の煙が
狭い谷間に重なるように じっと蟠っていた
僕の育った小さな町は 五年前の今日 湖の底に沈んだ

僕は都会のアパートで ささやかに独り棲んでいる
酒を借りては友達に 愚痴をいう日もあるけれど
何かこうして暮らすことが 長い夢をみているような
どこか本気じゃないような 思いになるのは何故だろう
本当の僕はどこかにいて 僕を捜しているようだ
ビルの谷間で夢たちが じっと蟠っている
僕を支える哀しい都会(まち)も とても大きな
湖に沈もうとしている

雨の少ない晴れた夏に ダムに立てば 八幡様と
立ち枯れた楠が 少しだけ見える日がある
実はあそこの床下に 少年時代の
宝が一杯つまっている 箱が埋めてあるんだ
今ふるさとが 僕にむかって 大丈夫かと
尋ねてくれている
大丈夫 大丈夫 大丈夫…


9.天然色の化石

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

今 都会ではビルに敷き詰めた石の間から
化石を見つけ出す遊びがあると聞いた
そういえばデパートの恐竜展で
この間不思議に思ったことがあった

何故恐竜たちはみんな同じ様に
淋しそうに緑や黒に塗られているのだろう
ピンクや赤や黄色やトカゲのように
虹色に光ったっていいと思わないか

あなたが永遠にしあわせでありますように
あなたが永遠にしあわせでありますように

ふと思うのは今から5億年ほどが過ぎて
地球に次の人類が生まれていたなら
ライオンの雄だけにたてがみがあることや
馬には縞や白があると気付くだろうか

たとえば小鳥が人間の言葉を真似て
犬が愛らしく尻尾を振ってなついたことや
空も海も森もみんな僕たちが
壊してしまったことに気付くだろうか

あなたが永遠にしあわせでありますように
あなたが永遠にしあわせでありますように

もしも僕が化石になって見つかったときに
僕の肌が黄色だったことに気付くだろうか
彼の肌が黒いというそれだけで
傷つけられた時代があったと気付くだろうか

あなたと僕が並んで化石になったとしたら
二人がこんなに深く愛し合っていたことに
誰か気付いてくれるだろうか
切ない生命のいとなみについて

あなたが永遠にしあわせでありますように
あなたが永遠にしあわせでありますように

あなたが永遠にしあわせでありますように
あなたが永遠にしあわせでありますように


10.夜想曲

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

空に拡がる 銀河の涯てから
はるかな風が吹いて来る夜は
子供の頃から 膝を抱えて
降り注ぐ愛の数をかぞえた
父よ母よ友よ 生命をありがとう
ささやかな私に勇気をありがとう
小さな星で生まれそこで育ちそこを愛し
そうしてあなたに めぐり逢った
存在の全てをかけて

愛しいあなたや あなたのまわりの
全てがしあわせでありますよう
愛しいあなたの 小さな生命を
護りゆくことが私の願い
いつもどんな時も 遠く離れようと
時の流れも超えてずっと いつもずっと
春の花も鳥も 夏の風も月の光も
みんなあなたの 味方でありますように
私が愛するように